入学式の夜、リビングに咲いた花

4月の始まり。朝から少し緊張した空気の中で迎えた入学式は、春の陽ざしと校庭に咲く桜に見守られながら無事に終わった。
帰宅した頃には、式場での写真や花束、記念品などで両手がふさがるほど。慌ただしく過ぎた時間の余韻を抱えながら家族はようやくリビングへと戻ってきた。

中央に置かれたソファに制服を脱いだ子どもがどさっと腰を下ろす。
疲れているはずなのにどこか誇らしげ。

花束を花瓶に移し、淡い色の花びらが照明に透ける様子をソファに腰を落とししばらく眺めていた。

深いクッションが体を支え、自然と家族の肩が触れ合う距離になる。
テーブルにはこれまでに撮った写真の束。めくるたびに笑い声と少しの涙が混じり合った。

入園式の小さな背中、初めて自転車に乗れた日の歓声、雨の日に一緒に歩いた道。
隣に座る子どもの頭にそっと手を置いた。

窓の外では夜桜が風に揺れ、散る花びらの影がカーテンに映っている。
その光景に包まれたリビングは、まるでひとつのアルバムのページのようだった。

ソファはただの休息の場ではない。
家族が肩を寄せ合い、新しい一歩を踏み出した日の記憶をしっかりと抱きしめている。
入学式の夜に芽吹いたこの思い出は、やがて時を重ねても腰を下ろすたびに静かに蘇り、暮らしを照らしていくのだ。


Petals ― 散りゆく一枚一枚が、家族の記憶をそっと重ねるソファ。
花びらが舞い落ちるたびに季節の移ろいを感じるように、ここに座る時間もまた心に静かに積もっていく。
そのやわらかな重なりはやがて一冊のアルバムとなり、日々を特別な物語へと変えてゆく。