始まりの針

新しい家で迎えた最初の朝。
まだ段ボールが片付かず、ダイニングの椅子も揃っていない。壁には真新しい陶磁器の時計だけが、静かに掛けられていた。

窓から射し込む光に照らされ、白い器のような文字盤に針の影が落ちる。
その影は、時が確かに動き出していることを教えてくれる。
家具もカーテンもまだ未完成の空間で、唯一「時間」だけが整えられていくようだった。

朝食のパンを分け合いながら家族の誰かがぽつりとつぶやく。
「ここから暮らしが始まるんだね。」
その言葉に応えるかのように、時計の針は小さな音もなく進み続ける。

昼には柔らかな光が壁に陰影を描き、夜になればランプの灯りを受けて温かな表情を見せる。
陶磁器の質感はどんな光も静かに受け止め、日々のリズムを美しく映し出していく。

それはただ時を告げる道具ではなく
「暮らしの始まりを記憶する証」として、家族の時間を刻み続ける時計だった。

Origin ― 暮らしの始まりを告げる陶磁器の時計。
新しい日々の起点となり、光と影を受け止めながら、家族の時間を静かに刻み続ける。