雨の日の午後、家族の真ん中で

九月の終わり。
長い夏の熱気をやさしく洗い流すように、しとしとと雨が降り続いていた。
窓の外では色づきはじめた木々の葉が雨粒をはじき、ゆっくりと落ちていく。
そのリズムがまるで秋という季節のメロディのように響いていた。

リビングの中心には、迎えたばかりのソファが佇んでいる。
厚みのあるクッションはふっくらとしながらも、沈み込みすぎず、安心感のある座り心地を与えてくれる。
グレーのファブリックはしっとりと落ち着き、アッシュの短い木脚がさりげないアクセントになって空間全体を穏やかに整えていた。

子どもはソファに駆け込み、背もたれに体を預けて絵本を広げる。
妻は隣に座り、膝の上に毛糸を乗せて編み針を動かす。
指先を通る糸の感触とファブリックのやさしい手触りが心を静め、自然と深呼吸を誘った。

夫は片隅に腰かけ、新聞を読みながらコーヒーをひと口。
「このソファ、本当に落ち着くな」
何気ないその言葉に、母は静かに頷いて微笑む。
その瞬間、リビングは雨の音と家族の気配で満たされ、家具の上に新しい記憶が一つ刻まれていった。

やがて子どもは妻の膝に頭をあずけて眠りに落ちる。
夫がブランケットを広げると、ソファはまるで大きな巣のように家族を包み込んだ。

降りそそぐ雨と、実りの季節を迎える秋。
このソファは静けさとぬくもりを同時に受け止め、家族の時間を記憶に変える舞台となる。