春のやわらかな風が窓から吹き込み、カーテンをゆっくり揺らしていた。
この家に引っ越してからちょうど一年。
最初は段ボールだらけで落ち着かなかった部屋も今では家具が馴染み、家族の気配が染み込んだ空間になっていた。

リビングの中央に置かれたテーブルのまわりにはウィンザーチェアが並んでいる。
引っ越した当初に選んだその椅子は、一年という時間を経てもなお変わらぬ端正さを保ちつつ家族の暮らしに自然に溶け込んでいた。
背もたれの滑らかな弓の曲線は、腰を下ろすたびに安心感を与えダイニングを家族が集う場所として支え続けてきた。

その日のブランチは、いつもより少しだけ特別だった。
夫がクロワッサンを買ってきて妻は旬のいちごをテーブルに並べる。
子どもは「この家に来てから一年経ったんだよ」と得意げに話し、アルバムを引っ張り出してきた。
ページをめくると、引っ越し当日の写真が現れる。
まだ家具も少なく、椅子に腰かけた笑顔が少し照れくさそうに並んでいる。

窓から差し込む光が椅子の木肌に柔らかな陰影を落とし、その変化もまたこの一年を物語っているようだった。

クロワッサンの香り、いちごの甘酸っぱさ、家族の笑い声。
それらがすべて重なり合い、日曜日のブランチはまるで「家族の一年を祝う小さな記念式典」のようになっていた。

家具は、ただ座るためのものではない。
この椅子はこの一年の記憶を受け止め、これからの暮らしへとつなぐ“節目の証人”となっていた。





Berry — 休日のブランチを、思い出の味に変える椅子。
一年を祝うテーブルのまわりに、静かに寄り添う。