記念日の朝

今日は結婚してちょうど七年目の朝。
窓から差し込む光はいつもと同じはずなのに、なぜか特別な色を帯びて見える。

ファブリックのやわらかな背もたれに身体をあずけると、背中を支える安心感と布のぬくもりがじんわりと広がっていく。
何気なく隣を見ると、まだ眠たそうに目をこすりながら笑う顔。
その瞬間、この七年間の景色が一気に胸の奥によみがえってきた。

初めてふたりで暮らし始めた日。
狭い部屋に小さなベッドを置いて慣れない日々を笑い合いながら過ごした。
引っ越しを繰り返し、そのたびに家具も少しずつ変わったけれど、どの家にも「ベッドの上で迎えた朝」が必ず思い出の中に残っている。

そして今。
この広い窓のそばに置かれた新しいベッドの上で
「七年目の朝」を迎えている。

カレンダーに赤い丸をつけていた日。

子どもが起きてきて「今日はケーキ食べる日？」と布団に飛び込んでくる声が響くと
部屋全体が一気に温度を増して、ただの寝室が「記念日の舞台」に変わっていく。


「これからも、ここから続けていこう」
そんな言葉を交わすでもなく、ただ隣にいるだけで伝わる。
ベッドの上で迎える朝が、これから先も記念日を重ねていくたびに
思い出の背景になっていくのだろう。



このベッドは眠りのためだけの家具ではない。
特別な日の朝を、鮮やかに記憶に刻む場所。
そして十年後も二十年後も、変わらない安らぎで家族の物語を支えてくれる舞台である。